酉谷山遭難事故について (2016)

2016/5/15
 
酉谷山、あるいは酉谷山避難小屋へ行くこととしてタワ尾根を使うとき、1か所、足を踏み外すと致命的な結果を招来する危険なか所がある。登りで使う場合は、ウトウノ頭から北上すると、虎ロープで孫惣谷側に導かれて大京ノクビレに降りることができる。

しかし、ここを長沢背稜から下りてきて、大京ノクビレから見る大岩を孫惣谷側(右岸)を巻きながら登りつめるルートを選択しないと、小川谷側(左岸)の足場の狭いところを通過しなければならず、大きな危険と隣り合わせになる。ここは垂直に切れ落ちていて、さらに傾斜が続いているので、足を踏み外したら最初の数メートルで致命傷になりかねないところだ。大京ノクビレ側(つまり「長沢背稜」から下山するとき)からはロープによる誘導がなされていないので、間違って大岩に登ってしまい、事故に遭うことは想像に難くない。ただ、右岸の木の幹に赤テープが巻き付けられているので、注意して見ればルートを誤る可能性は低い。

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大京ノクビレから見る「大岩」。垂直の岩壁の端にルートがあるが、
ここに乗ってはいけない。

まさしく、今回の酉谷山遭難事故はこの事例であろう。遭難者を発見した人のコメントが他のブログに載っていた。昭文社の山の地図では、最近破線ルートとして載せられていて、危険個所の認識なく入山する人もいるだろう。


これまで、27回、タワ尾根を使った。タワ尾根には3か所、トラロープが張られているが、真に危険なところは大京ノクビレの大岩に乗ることを阻止するために張られたところであり、他の2か所は下りの道迷いの防止に有為である。大岩のトラロープは登りの時のためであるが、奥多摩秩父のバリエーションルートはまず、登りに使って地形を覚え、危険な場所を確認するのが鉄則であり、登りの経験がなく最初に下りのルートとして使うのは避けなければならないというのは、頭の隅に置いていた方がいいと思う。また、この3か所の虎ロープも2か所外されていたことがあり、「ロープの存在」を頼り切ってはいけない。

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長沢背稜から下りてきた場合の「大岩」

タワ尾根もそうであるし、小黒についても、トラロープが張られたことによって難易度が多少軽減されたはずだが、その虎ロープの助けもあって危険な目に遭わなかったはずなのに、そして、初めてこれらのコースを歩いて無事切り抜けたからと言って
・野趣が損なわれる
・虎ロープは必要ない
・魔界ではなかった
などと記録する人もいる。余計な赤テープが不要なことは論を待つ必要もないが、事故が多発するマイナールート上の緊要な虎ロープでの誘導は時には人命を損なうことを防止する役を担っていることを知るべきである。要は、重大な結果の招来が予測される個所には予防措置が必要なこともあるということである。

タワ尾根の記録は
で・・・。