ペテガリ岳~コイカクシュサツナイ岳縦走 第6日目(2005・8・6)

(第6日目)コイカクシュサツナイ岳へ・8月4日
今日も雨の中でテントを撤収しなければならない。ほとんどの物が水を吸っているので背負う荷物は重い。長い道のりを経てコイカクシュサツナイ岳まで来ると、そこから夏尾根の頭までの間は快適なお花畑の中のトラバースを楽しむ。
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カムイビランジ


イカクシュサツナイ川に下りる「夏尾根」とはいかにも快適な登山道を連想させる名前だ。夏尾根の頭から標高差1、100m、距離にして2kmを下降し、沢を4km下って道路に出て8km歩けば山岳センターだ。宅急便で送ってある乾いた衣類、乾いた靴下、乾いた靴に履き替えることができる。
しかし、夏尾根は厳しかった。平均斜度は45度もある。夏尾根の頭から覗くとそこは落ち込むような急斜面になっていて、それは1305mまで続いている。左側は常に切れ落ちていてもろい岩場とあいまって危険を伴う。

左側に沢がある。轟々と音を立てている。周りの山肌からは幾筋もの滝状となった流れがあり、これらがコイカクシュサツナイ川に集中しているのだから、唯一の下山道となるコイカクシュサツナイ川は相当の増水が考えられる。
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背の高い熊笹で踏み跡は消えてしまい、コイカクシュサツナイ川と沢の合流地点である二股への道を見失うが、どうにか二股の沢の脇にあるテント場に着く。コイカクシュサツナイ川は轟音を立てて流れており対岸に渡れそうにもない。合流する沢も流れが強い。意を決して対岸に渡り、コイカクシュサツナイ川の本流に出て下流へと向かう。

河原を歩けるところは河原を歩き、函状となって本流を歩けないところは高巻きをする。しかし、どうしても高巻きができない函があって腰まで浸かって岩をへつらなければならない。本流に入り岩をへつるうちに流れが岩にぶつかる場所があって足をすくわれ、つかんでいた木の枝が折れ、急流に揉まれて対岸に押し流されてしまう。対岸を下流に向かって歩くがその先では、元に戻らなければならない。流されても次には浅瀬があるので大丈夫だろうと腹をくくって本流に入り、対岸に渡って下る。流れに入れないときは草木をつかんで高巻きし、踏み跡を見つけながら歩きに歩く。

遠くにログハウスが見える。札内ヒュッテだろうか。それにしては近すぎる。道路も見えない。結局そこは山間部に設置された雨量測定所であった。測定所からの踏み跡はコイカクシュサツナイ川に向かっていて、到底その先には行けない。もう今日はここで停滞するしかないのだろうかと思案する。明日を待つと、本流の流れに変化は見られるのだろうが、高巻きできるところまで行ってみようと、うっそうとした山側に向かう。急勾配の山を高巻くと小さな踏み跡が次第に収斂されてしっかりした踏み跡となっている。

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大きな砂防ダムを高巻き河原に出てもうこれで助かったなと思ったら、深い流れに阻まれる。いったんダム下まで戻って川を斜行し、対岸の林床に踏み跡を見つける。空はだんだん明るくなってきた。川筋も広がっている。これで大丈夫だ。とうとう札内川に交差する道に出た。安心した途端、腕の痛み、肩甲骨の不快感、倦怠感が襲ってきて、おまけに足には豆ができていて歩行もままならないが、あと8km先の山岳センターに向かって歩くしかない。

山岳センターに着いたときはザックを下ろすことも大儀なほど疲労がピークに達している。あらかじめ送っていた荷物をもらって着替えを済ますと、程なくして帯広や千代スースホステルのご主人が迎えに来てくれた。あ~、ありがたい。ゆっくり風呂に浸かろう。ビールも浴びるほど飲みたい。
ユースホステルは帯広郊外の田園風景の中にポツンとある。お風呂を勧められてさっぱりし、山で汚れた衣類を洗濯し、道具類もきれいに清掃する。夕食のテーブルは、一人旅あり、バイク一人旅の女性ありなどでにぎやかだ。清潔な施設、快適なベッド、心尽くしの食事が用意されている宿は、山人にも十分な休養の時間を与えてくれた。