カムイビランジ

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カムイビランジは、日高の山に咲く固有種である。
その花は、可憐で美しいが、その姿にお目にかかっている者の数はそれほど多くないと思われる。
なぜなら、長い沢歩き、厳しい稜線歩きに耐えなければならないからだ。
 
そのカムイビランジを見るために、開花時期に合わせてこれまで5回、日高の稜線を歩いた。
どれだけのヒグマに遭ったであろうか。
しかし、5回の縦走中、稜線では誰一人として会わなかった。
それほど日高の背稜はマイナールートと化してしまったのだろう。
 
そのようなマイナールートではあるが、野趣に富んでいる。
ヒグマとの遭遇、
足の置き場に困る高山植物
そして固有種。
 
そんな貴重な花の植生を取りまとめた。
興味をもたれたら、日高の稜線を歩いていただきたい。
 
なお、カムイビランジの咲く稜線は、天候の悪化などにより急なビバークが必要な場合も出てくる。
そんなときのために、稜線を中心とするテント場の様子を取りまとめた。
安全な日高の稜線歩きの参考としていただければと思う。
 
中部日高、南部日高の稜線は、困難なゆえ今は登る人も少なくなって登山道がハイマツに覆われ、とある日高通いの達人が「這い松の続く瘠せ尾根を南下する。JPから岩混じりのフカフカとしたお花畑の中を20分少々でそのピークに着いた」と書かれているように、高山植物が登山道跡で十分に成長してきている。
この縦走路が、登山ツアーの企画となることもなかろうし、これからも人とすれ違うことは稀だろう。
インターネットで情報が広範に発信されるこの時代、いくばくかでも参考となればと思う。
 
首都圏に住みながらその近郊で自生のアツモリソウを5株も見ることができた。
ヤマシャクヤクは、同様に首都圏で1000株に迫る大群生地を見つけた。
ベニバナヤマシャクヤクは、ヤマシャクヤクの探索中に見つけた。
 
これらの花の所在地は、断片的にでも一切公開すべきものではなく、また、これらの場所に入るときは細心の注意をもって行動すべきである。さもなくば、多くの人が殺到して自生地・群生地は消滅してしまうだろう。然るに日高、稜線の登山道がハイマツで覆われてしまって、古の踏み跡を探すのも大変だと言うことは、もう、ここが放棄されてしまったということと同義であろう。その放棄され荒れ放題となった古の踏み跡を、この年齢で毎年歩く。律儀なことだ。
 
自然保護とは、いくらそこに自然の姿が残っているからと誰も立ち入らせないような悋気なことではなく、人と自然の美しい調和で成り立つものではなかろうか。古の踏み跡を遠慮がちに歩きながら大いに日高の山や自然を楽しんでいただきたい。日高の稜線に立ったときには些事、瑣末なことを忘れてしまって高揚している自分を発見するかもしれない。