酉谷山/小黒での遭難事故 (2015)

2014年12月1日に酉谷山で遭難事故があったとの記事が、埼玉県警のホームページにあった。70歳代の老人が酉谷山を大血川ルートから日帰り予定で登山し、道迷いにより翌朝に下山してきたということだった。

大血川からのルートは、酉谷山手前の小黒での遭難騒ぎが絶えないが、このルートのどこに道迷いの要素があろうかと、その遭難事故の2週間後に同じコースを歩いたたそがれおやじさんはその印象を記している。ただ、小黒がなんぼのものじゃいというのであれば、このルートでは、崩壊地や急斜面のほか魔界の「小黒」に張られた方向指示用のトラロープに助けられて、ということもあり、これらが撤去されたときのリスクも加味して歩くのだと言う心構えが必要になる。

そうでなければ、12月の酉谷山界隈で道迷いをし一夜を明かさなければならないような人が現れようがない。どうして酉谷山で、小黒で、あるいはそれ以外のところで迷わなければならないのか。

たそがれおやじさんが
『いやいや、魔界と思って出かけたら、核心部はすでに魔界ではなくなっていて、むしろ、踏み跡の迂回と植林内の徘徊に苦しんだといったところです。
その核心部の魔性はテープにも原因があったようですね。そこいら中に垂らされたテープに惑わされて、コース外に出てしまうといったパターンでしょう。自分で付けておいて、誤って戻って来てもそのまま。この繰り返しではなかったかと。
幸いにも、この山域を愛する方がきれいに掃除をされたのでしょう。テープを見かけることはあまりありませんでした。当分は遭難者も出ないと思いますよ。不心者が派手に付けなければ。ただ、植林の中は仕方がないですね。作業の目印にもなっているようだし、外すわけにもいかず、踏み跡が消えればついテープを追って迷ってしまう。こういう場合は、無理矢理に尾根に出て、急斜面を下るしかないでしょう。』
と述べているとおり、登山者によるテープが乱雑に付けられているほか、林業の作業用のテープも多い。

しかし、いずれにしても混在しているそれらのテープがそれぞれ何を示しているのかその見極めをしながら高みを目指せば、あるいは小黒から大血川へ出るに際しどのように下りればいいかのシュミレーションができていれば、小黒に張られたロープを頼らなくても、そして小黒は魔界なんかじゃなかったなんていまさら安堵することなくても済むことではある。

煩雑に付けられたテープの類について言えば、GPSでも持って歩けばこんな喧しい印を付ける必要もないのに、ましてや非粘着テープを買う金が惜しいからというようなあまりにも貧乏くさい荷造り用のビニール紐をベタベタ括り付けて、この美しい自然林の中の風景をどうしようというのだというような貧相な行為をする者に対する憐憫の情は拭い去り難い。